日々の泡

書きたいときに書きたいことを書きます。

石原さゆみさんという踊り子さんのこと

こんにちは。
石原さゆみさんという踊り子さんのことをすきになって、8ヵ月とすこし経ちました。


夏の終わりにストリップという新しい現場に手を出して、自分なりのレポ的なものを3回更新していたのですが、実は書き終わったまま更新していない4回目というものが存在しています(そのあとはかくかくしかじかでブログ記事というかたちに残すのをやめています)。
さゆみさんをはじめて見たのはその、更新していない4回目になる予定だった、10頭の道劇でした。

 

さゆみさんはその日、くのいちとアニメドレーのふたつの演目を出していました。
くのいちの演目の時点では、かわいいな、すてきだな、と思っているくらいでした*1が、アニメドレーで、というよりはアニメドレーのラストにかけられていた曲で、わたしはさゆみさんにズドンと落っこちてしまったのでした。


ストリップでは、基本的に既存の曲を組み合わせて演目がつくられています*2。なので当然、自分がすきだった曲、すきな曲、思い出の曲が演目に使われることもあります。
アニメドレーのラストの曲は、わたしにとって、そういう思い出の曲でした。

 

そうして感情をめちゃめちゃに揺さぶられたわたしは、アニメドレーをもう一度(あとラムちゃんのポラ着の写真を撮りたい…*3)、の気持ちでさゆみさんのいる香盤に足を運ぶうち、アニメドレーが観たいのか、さゆみさんが観たいのか、はたまたほかの演目が観たいのか、あるいはそのすべてが渾然一体となり、わたしはこのひとを推す、と思うようになりました。

 


さゆみさんの2年半という歴史にたいして、わたしはぜんぜん新規だな、と感じています。
当然ながら、ぜんぶの演目を見ることもできませんでした。*4

 

そんななかでわたしがいちばんすきな演目は、クリスマスの演目です。
かわいらしいコートとベレー帽であらわれるさゆみさんは定番のクリスマスソングで1曲踊ったあと、デート服をお客さんに選んでもらって着たり、サンタさんのようにプレゼント*5を配ったりします。
一転してベッドはさみしげです。小さいクリスマスツリーを舞台上に置き、ワンピースを脱いださゆみさんはエアセックスをしますが、流れている曲や照明とあいまって、すこしさみしい雰囲気です。
そして、ポピュラーな、でもやっぱりさみしいクリスマスソングにあわせてポーズをきったさゆみさんは一度はけ、デート服のワンピースを着てほほえみながら踊ります。
ラスト、しあわせそうな顔でそこにいるのであろう恋人にキスをして、終わりです。

 

わたしはこの演目を、別れてしまった恋人の演目だと思っています。
最後、デート服をふたたび着てあらわれるさゆみさんは、記憶のなかのさゆみさんで、とっくに失われてしまってもう戻ってこない女の子です。
この演目を見るたびかなしい気持ちになって、でもまたかなしい気持ちになりたくなります。

 

この演目をはじめに見たのは道劇で、今はもうないTSミュージックと、4頭のミカド劇場でも見ることができました。
ミカドで見納めになったであろうクリスマスですが、わたしはこの演目を道劇で見るのがとくに好きでした。

ベッドの1曲目と2曲目の間には、すこし間があります。その間劇場の照明は落とされて、しずかな劇場で、ちいさなクリスマスツリーだけが光っています。
ミカドとTSの盆はまわりませんが、道劇の盆はまわります。道劇で見るクリスマスの演目では、真っ暗な中に光るツリーだけがしずかにまわっている時間がありました。
あのものがなしさは、まわらない盆だとすこし減ってしまう、とわたしは思っています。

 

わたしにとってストリップの魅力は、圧倒的な生命力です。盆の上で自分の身体を自由に扱ってダイナミックなポーズを次々きめていく踊り子さんは美しく、つよく、豊かで自由な存在に見えます。盆の上の踊り子さんは客体ですが、同時に主体です。わたしはストリップに希望を見出しています。
でも同時に、さみしい演目にどうしようもなく惹かれてしまう部分もあります。
さゆみさんのクリスマスは、わたしのそういう、さみしくなりたがりの部分にとても刺さりました。

 


さゆみさんの演目の特徴としてぱっと思い浮かぶのは、衣装と選曲でしょうか。
まず、衣装。引退発表の際のインタビュー*6でも「親しみやすいような私服や職業のコスチュームが多い」、と話していた*7とおり、さゆみさんの衣装はほとんどが私服っぽかったり、コスプレっぽかったりと、ドレスなどのきらきらした衣装らしい衣装がすくないです*8
そういう衣装は、さゆみさんのいい意味でのふつうっぽさがとても生きます(めちゃめちゃにかわいいという意味です)。そして、ストリップをはじめて見る女性にもとっつきやすいんじゃないかと思っていて、わたしはおすすめの踊り子さんにさゆみさんをあげていました。
とにかくセルフプロデュースがうまくて、自分がどう見えているのか、どう見せたらよく見えるのか、わかっているんだろうな、という気がします。

 

そして、選曲。しばらく前にさゆみさんのブログをさかのぼって読んでいて、そのときにさゆみさんはお客さんが知っている曲を使うように心がけているのかな、と感じました*9
わたしがアニメドレーのラストの曲で盛大にさゆみさんへ落っこちたように、知っている曲には、知っているというだけで感情を動かす力があります。CMでも、映画の主題歌でも、そのへんの有線でかかっていた曲でも、曲に付随する感情や思い出をまったく持っていないひとはいないと思います。
ポピュラーな曲を選んでかけているさゆみさんの演目で、知っている曲と出会い直して感情を動かされているお客さんは多いのではないでしょうか。


もちろん、ストリップにはまったく知らない曲とはじめて出会う楽しみもあります。とにかく情報量が多い娯楽なので(裸体はとても情報量が多いと常々感じています)、ストリップではじめて聞いた曲はなかなか忘れません。まだ1年もストリップを見ていないわたしでも、ふいに外で劇場で出会った曲を聞いてハッとすることがしばしばあります。
さゆみさんは引退前が決まってから、好きな曲を使った、という演目を複数出しています。パン屋さんのと、パートタイムラバー、天使をこれまで見ることができました*10
さゆみさんの好きな曲で構成された演目を見ることができるのは楽しいです。

 


最後に、さゆみさん自身について。
さゆみさんのことを、想像上の初恋の女の子みたいだと思うことがあります。
さゆみさんは、白くてスタイルがよくて笑顔がかわいいです。身長がけっこう高いほうなのではと思うのですが、顔が幼くみえるのと表情筋がかわいいので威圧感はありません。

さゆみさんは写真の時間、いつもニコニコ笑っています。変顔をしておどけてみたり、親しげにお客さんにくっついてツーショットを撮っていたりします。さゆみさんがほかのお客さんとツーショットを撮っているのを見ると、つられてこちらもにこにこしてしまうことが多かったです。

 

わたしはさゆみさんがベッドですこし口を開けて斜め上を見ているときの表情がとてもすきです。

だれとも目が合っていない、とおくを見るさゆみさんの後ろにリボンがかかるとき、それはそれはきれいな一枚絵のようになりました。

 

つくっている演目がノスタルジックですこしさみしいこともあって、さゆみさんは目の前で踊っているときも記念写真やアルバムみたいだったり、遠い日の思い出みたいだったりします。

ずっと視線の先や、伸ばした手の先をおいかけていきたい。すごく近くに来てくれるのに、とおいところにいて手が届かない。さゆみさんは、そういうきもちになる踊り子さんです。

 

また、以前劇場で、初見っぽい男の子が「このひとの魅力はなんですか?」とさゆみさんの写真列に並んでいるさゆみさんのファンに聞いているのを見かけました。それに対してファンの男性が「わけわかんないとこだよ」と言っていたのがすごくグッときて、わたしは「わかる!」と思いました。男の子はわかんなそうな顔をしていましたが…。
最後までなにを考えてるのかよくわからないまま、さゆみさんは舞台から降りてしまうような気がしています。

 


細々とストリップを見ていくつもりだったわたしに、ギュンとギアをかけたのがさゆみさんの引退発表でした。
ストリップの話を友人にするとき、転げ落ちるはやさにいつも驚かれます。
でも、ブログに書き散らかしているこれまでの記事を読めばなんとなくわかっていただけると思いますが、わたしは趣味にお金を使うために働いている人間です。そういう生活のなかで、今ここでお金も時間も惜しまず使う、というギアをかけることが何度かありました。
そういうことを繰り返していると、ギアをかけるべきと思われるようなタイミングが来たとき、ためらわずにギアをかけることができるようになります。ギアのかけかたを知っているからです。
さゆみさんの引退発表はわたしにとって、今ギアをかけないと、と思う出来事でした。

 

さゆみさんは明日、彼女にとってのホームの劇場である、渋谷道頓堀劇場で引退します。

さゆみさんが無理なく引退まで輝けるよう、そして引退後の道にさゆみさんの幸せがあることを、祈っています。

*1:あとあの演目は、ぱんつを脱いだあと両手首にひっかけるところに行間を感じてとてもすき

*2:オリジナル曲で演目をつくっている踊り子さんがいたらぜひ見たい…と思っていたら葵うさぎさんがおそらく自作の曲で踊っていてすごかったのを5結の上野で見ました

*3:無事撮れました、うれしいね!

*4:くのいち、アニメドレー、クリスマス、空飛ぶさゆみんさくらんぼ、2周年作、ウェディング、セーラー服、夏のビーチボール、旅ガール、パン屋さんのやつ、パートタイムラバー、デビュー作、天使の14演目を見ることができています。ももクロ、ずっと気になっていましたがきっと見れないままさゆみさんは引退してしまう…。

*5:1回もらえたことがあって、小袋の柿の種でした。好きです

*6:俺の旅 2017年3月号に掲載されています https://www.amazon.co.jp/dp/B01NGYM5ZX/ref=cm_sw_r_cp_api_BoEozbTAZ1WXE

*7:「貯金のために衣装にもダンスレッスンにもお金かけられないステージだった」ともブログで書いていましたが http://ameblo.jp/sayusayusayu92/entry-12250794941.html

*8:ウェディングドレスを着る演目はあって、それもとても好きです。一度でいいからヴェールをあげる役のできる席に座りたかった…

*9:新作について、「知らない曲だらけになっちゃうけどごめんね」って書かれていたり(https://t.co/k0YJkBElAK )「これはみんな知らないから演目には使えない」って書かれていたり(https://t.co/E5AY56TWLU

*10:さらに引退作がもうひとつあるそうです