日々の泡

書きたいときに書きたいことを書きます。

srecetteさんの21作目"zéphyr"によせて

こんばんは、あわあわです。

あいかわらずしんどいニュースのおおい毎日ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 

さて、だいすきパフェ屋さんことsrecetteさんの21作目"zéphyr"が、6月27日から本日7月24日までの1ヶ月、渋谷のFabCafeにて提供されていました。

いつもは当日枠を設けたうえで一部予約制とされていますが、今回は新型コロナウイルスの感性拡大防止のため、完全予約制での提供です。

www.instagram.com

わたしもせっせと予約を取り、お友達を誘い、全8日間のうちの4日間、以前にくらべてぐっと人の減った渋谷の坂をのぼりました。

 

さて、zéphyrとは、フランス語でそよ風という意味だそうです。

そんなやさしい名前をつけられた今回のパフェは、四季春茶という台湾の烏龍茶がメインの素材としてつかわれた、お茶のパフェでした。

zéphyrには、bouquet*1を思い出させるような花びらを模したメレンゲがあしらわれ、"これまででもっとも小さなグラス"で提供されたbrume*2とおなじグラスが用いられています。

 

f:id:merryberrymerry:20200724215223j:image

 

zéphyrを食べるとき、わたしは(わたし以外のおおくのかたもそうだとおもいますが)最初のひとくちに四季春茶のソルベをくちに運んでいました。

以前にもこのブログに長い長い旅行記をあげているとおり、わたしには一昨年くらいから台湾ブームがおとずれています。その流れで渋みがすくなくかろやかな中国茶もすきで、現地でたのしむのはもちろん、茶葉を買ってきて飲むこともありました。

srecetteさんのソルベは、どれも素材のいちばんおいしいところを丁寧にすくいとってきたような味がします。四季春茶のソルベも例外ではなく、お茶のもつふくよかな甘味と苦味が、ぶわっとくちのなかにひろがるおいしさでした。

 

四季春茶のソルベのふちをいろどるのは、グレープフルーツのコンフィチュールです。コンフィチュールにかくれて、グレープフルーツのジュレもそっと置かれていました。

四季春茶ソルベと一緒にジュレやコンフィチュールをくちにはこぶと、あじわいがぐっとしまるのをかんじます。グレープフルーツの酸味ややさしい苦味が、四季春茶のはなやかなかおりに深みをあたえていました。

 

ひとしきり四季春茶のソルベと、ジュレやコンフィチュールをあじわったあたりで、メレンゲの花びらをそっとつまんで1枚ずつ食べます。

srecetteさんのパフェの特徴のひとつに、繊細でほろほろのメレンゲがあげられるとおもいます。srecetteさんはこのメレンゲに、口内の温度調整の役割もあたえているのだそうです。

たしかに、ずっとつめたいものを食べているとくちのなかが冷えて、だんだんあじがわからなくなってくることってありますよね。そんなときに常温のメレンゲは、冷えたくちのなかをやさしく常温にもどし、ソルベなどのほかのパーツをあじわいやすくしてくれています。

zéphyrのメレンゲは、四季春茶の茶葉を粉砕したものが練りこまれているそうです。ちいさなつぶつぶ模様のかわいらしいメレンゲは、後味にお茶のさわやかなかおりがただようおいしいメレンゲでした。

 

グラスの内側、生クリームの層の下には、グレープフルーツのソルベとキウイのソルベが並んでいます。ふたつのソルベはどちらも酸味がつよく、目の覚めるようなおいしさでした。

グレープフルーツはコンフィチュールとジュレとしても使われていますが、もっとも酸味をつよくかんじるのがソルベでした。

そしてキウイのソルベ、こちらはグリーンキウイとゴールデンキウイを混ぜてつくられているそうで、これまたキウイよりもキウイらしい、おいしいソルベです。種のつぶつぶ食感もよく、生のキウイにそれほど興味のないわたしもだいすきでした。

 

最下層にかくれているのが四季春茶の茶葉をつかったプリンと、マスカルポーネクリームです。わたしはsrecetteさんのプリンがたいへんすきなので、前回のSimile*3に続きプリンが食べられてとってもうれしかったです。

これまでsrecetteさんのパフェにはいっていたプリンは、卵感がつよくカラメルの苦味でぐっとしまったおいしいかたいプリンでしたが、今回のプリンはカラメルのない、茶葉を使用したプリンです。卵感のつよさはそのままに、茶葉のかおりがふわっとひろがるこちらもおいしいかたいプリンで、プリンのひとくちめは毎回どきどきわくわくしていました。

そしてその下のマスカルポーネクリームも、すこし酸味をかんじるまったりしたおもめのあじわいで、まろやかなプリンとの相性がとてもよかったです。

最後までバチバチにきまった構成で、これだからsrecetteさんのパフェがいちばんすき…! といつもおもっていました。

 

と、このようにてっぺんからつまさきまでたいへんおいしいパフェが、srecetteさんの21作目、zéphyrです。

 

今回わたしは冒頭にも書いたとおり、そしていつもsrecetteさんのパフェを食べるときはそうしているように、お友達を誘って一緒に食べました。

これまで、お友達とはパフェはもちろんですが、夜ごはんを誘いあって食べることがおおかったようにおもいます。あのお店いま気になっているんですよね、ああじゃあ今度一緒に行きませんか、誰々さんもさそいますか、そういう会話をいくどとなく交わしてきました。

けれどコロナ禍にはいり、そんなことは当然できなくなりました。誘ったけれど実現しなかった食事会や、お店を予約までしたのに結局やめになったままの食事会もあります。

もちろんニュースやSNSから流れてくる情報で、わたしはこのコロナ禍がながく続くことを理解していました。前回の記事でアフターコロナという言葉を用いたように、いままでどおりの生活がもどってこないことも、重々わかっているつもりでした。

 

けれどやっぱり、そういう現実はわたしには耐えがたく、6月上旬までのわたしは、自分がこれまでなにをたのしみに生きていたのか、どういうことをうれしいとおもう人間なのか、わからなくなっていたようにおもいます。

 

zéphyrの初日、ひさしぶりに会うお友達とパフェを食べながら、わたしはひどく緊張していました。

srecetteさんのパフェをひさしぶりに食べることで自分の感情がどううごくのかわからずにいたのと(一昨年パフェ構造学のイベントでMintopia*4を食べて号泣した人間なので…)、お友達と一緒の時間の過ごしかたが、いまいちわからなくなっていたからです。

けれど、毎週末だれかと会って、パフェを食べておしゃべりする1ヶ月を過ごして、わたしはふたたび自分のことがわかってきたような気がします。

 

食べたことのないものを食べるのがすきなこと、すきなお店やつぎに行きたいお店、本屋さんで過ごす時間のたのしさ、つくってみたいお料理、ひとりで知らない道を歩くときのわくわく感、かわいいかわいい埼玉のコアラたち。

ステイホームしているうちに忘れてしまったたくさんの自分のかけらが、お友達との会話や、パフェを食べる前後の時間にありました。

 

いま、ふたたび1日の感染者数が増えています。検査が増えていると言っても、陽性率だってあがっていて、感染がふたたび拡大していることは、まちがいないとおもいます。

そんななかで、以前のように夜ごはんをお友達と食べに出かけるのは、まだすこしむずかしいとかんがえています。マスクをはずしておしゃべりをしたり、おなじお皿をつついたりするのに、ハードルを感じます。

けれどパフェなら、パフェを食べている間だけだまっているのもそうむずかしくありません。パフェが来るまでマスクして、パフェを食べ終わったらマスクして、もちろんきゅうくつではありますが、それならおしゃべりもたのしめます。FabCafeは机がおおきいので、それも安心材料のひとつになりました。

 

おそらくsrecetteさんも、ふたたび感染が拡大するなかでパフェを作り続けることについて、かんがえたりまよったりしただろうとおもいます。けれどわたしは、srecetteさんがふたたびパフェを食べる機会を設けてくださってほんとうによかったなとかんがえています。

zéphyrはそよ風という名前のとおり、ながく続いた梅雨と、まだまだ続きそうなコロナ禍の、じめじめしてしんどい毎日にやさしい風を吹き込んでくれるパフェでした。

だいすきなsrecetteさんのパフェとともに、自分をとりもどす1ヶ月でした。

 

やっぱり日常はもう戻らないのかもしれません。けれどわたしはまたsrecetteさんの新作パフェを食べたいし、あたらしくできるFabCafe Nagoyaでもお友達みんな誘ってパフェを食べたいし、なんならsrecetteさんin FabCafe Taipeiあわせの台湾旅行だって、いつかしたいとかんがえています。

 

だからわたしは、ずっと祈っています。

終わりの見えないたいへんな日々が、せめてもうすこしましになりますように。

srecetteさんが、これからもたのしくパフェを作り続けられますように。

*1:バジルとパイナップルのおいしいパフェです。2017年の夏、wood good brothersという荻窪のインテリアカフェで提供されました。

www.instagram.com

*2:いちじくのソルベからはじまるおいしいパフェです。2019年の秋に提供されていました。

www.instagram.com

*3:りんごのソルベからはじまるおいしいパフェです。2019年の年末にSALON DE THÉ LÙVONDで、2020年のはじめにFabCafeで提供されていました。

www.instagram.com

*4:2017年の初夏からたびたび提供されている、チョコミントのおいしいパフェです。イベントではwasaraという紙の皿を用いてミニパフェとして提供されました。